「黄砂が環境にもたらすプラスの効果」

三上 正男 (気象庁 気象研究所 環境・応用気象研究部主任研究官理学博士)

 日本に飛来する黄砂の発生地・中国では、ダストストームと呼ばれる強い風が発生し、地域社会に非常に大きな影響をもたらしています。農作地では栄養分を含んだ土壌が強風で削られたり、ネガティヴな災害としてとらえられています。ところがその一方で、別の観点から見ますと地球の気候システムに対しプラスの因子として働いている可能性もある事から、様々な研究が進められています。

 大気中に舞い上がった砂の粒子は太陽の日射を散乱吸収し、自らも熱を持って赤外放射をします。その放射の過程で、大気を冷やすという熱的な効果をもたらし、温暖化の抑制に一役を担っているのではないかと言われはじめてます。

 又、黄砂粒子を試験管に入れて水に溶かし、リトマス紙で計るとアルカリ性を示すことが分かっています。今日、酸性雨が大きな環境問題として取り上げられていますが、黄砂が持つアルカリ性の性質は、硫黄酸化物など、人為的な汚染物質を含んだ酸性雨に対し、中和効果を示すことがわかってきました。物理過程のプロセスとして完全に解明されてはいませんが、多くの専門家の研究により、この効果を指示するデータも増えてきています。

 更に、黄砂粒子は鉱物粒子のひとつであるシリカを主成分とします。その中にはアルミニウムや鉄といった金属成分も一部含まれており、黄砂粒子が海洋に落下すると、海洋に浮遊している植物性プランクトンの栄養源として吸収されその増殖を手助けしています。植物性プランクトンは二酸化炭素を吸収し、酸素を吐き出します。したがって植物性プランクトンが増殖し二酸化炭素の吸収源となることで、地球の酸素循環や二酸化炭素量の変化に間接的にかかわっている可能性があると言われてます。

 このように黄砂は地球温暖化をはじめとした地球の気候の問題に対し、プラスに働く可能性も持ち合わせています。地上に舞い上がった砂は局地的にはマイナスですが、グローバルな見地に立つとプラスの役割を担っている側面もあるといえましょう。


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