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私は国連大学と一緒にゼロエミッション運動を推進している。ゼロエミッションとは直訳すれば、「廃棄物ゼロ」という意味だが、私たちが進めている運動は、これを発展させて、廃棄物を出さない企業活動、地域社会を構築しようとする試みである。ゼロエミッションの発想は、廃棄物を資源として活用する新しい産業連鎖型の経済社会を作り上げることを目標にしている。
たとえば、A産業が排出する廃棄物がB産業の原材料になる、B産業の廃棄物をC産業が資源として使う・・・といった新しい産業連鎖の輪が広がれば、廃棄物は完全にゼロにならなくても、ゼロに近づけることが可能になる。そうした新しい産業構造をつくり出すためには、既存の常識にとらわれない新しい発想が必要になる。
ゼロエミッションの考え方は、生態系からヒントを得ている。自然界に存在するものに無駄な物はないとエコロジストは言う。その存在は、必ず誰かの、何かの「お役」にたっている。食物連鎖を考えてみればよい。草食動物は、草木を食糧にしている。肉食動物は草食動物を捕らえて食べる。その肉食動物も死んでしまえば、土に戻り、微生物などの働きで分解され、草木の栄養になる。こうして生態系は、持続可能な変化を遂げる。
生態系は、神が与えてくれた究極のゼロエミッション・システムである。先日(10月下旬)、世界自然遺産に登録された白神山地(青森県と秋田県にまたがる地域で、世界最大のブナ原生林の存在地)のふもと、青森県・西目屋村で、「ブナ・シンポジウム・ブナの学校」が開かれた。森の専門家たちの話を聞いていると、ブナ林が生み出す豊かな自然の営みがくっきり見えてくる。
ブナは、スギなどより成長がずっと遅いが、「緑のダム」といわれるようにたっぷり水を含んでいる。一本の成木に40万枚を超える豊かな葉が繁り、様々な昆虫の餌になる。その昆虫類を求めて多様な野鳥がやってきて、春になると森のコンサートが始る。谷川に突き出した枝からは、満腹になった蝶や蛾の幼虫が風に揺られポト、ポトっと落ちると、それを待ちうけるイワナがいる。
ツキノワグマにとっても、ブナ林は格好の住み処になっている。数年周期でブナ林は豊富な実を付けるが、そんな年には、人里に出て捕獲される熊の数は大幅に減ると、ブナと熊の研究者が報告していた。秋になると見事に黄葉し、根の周辺には秋の味覚、キノコ類があちこちから顔を出す。大地に蓄積された枯れ葉は、肥沃な腐葉土に変わる。それがまた大きな保水機能を持ち、安定した水を谷川に供給する。
ブナ林に似せた産業生態系を21世紀になんとか定着させないと、持続可能な生活が危うくなる。ゼロエミッション運動は、日本で発想され、その取り組みは、日本で一番進んでいる。自然環境をこれ以上悪化させないためにも、生態系の営みを様々な視点からさらに深く観察し、それを反映させた新しい経済社会システムをつくりあげたい。ブナシンポジウムは、そんな気持を鼓舞してくれた。
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