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「アフリカは『宇宙船地球号』の船底にあいた穴だ。船底では三等船室客が必死に水を掻い出しているのに、一等船室客の方は無関心。船が沈むときは一緒なのに。」(あるアフリカ飢餓救済ボランティアの言葉,石
弘之「地球環境報告」1988より)
世界の陸地面積は約130億ha、そのうちほぼ40%にあたるおよそ52億haがすでに沙漠化しています。そして、現在も毎年約600万ha(UNEP
1984)の割合で沙漠化が進行中で、これは日本の耕地面積にほぼ匹敵します。世界の中でもアフリカは特に拡大速度が速く、日本の陸地面積の1.7倍に相当する6,500万haが過去50年間に沙漠化したと言われています。このことを、どれだけの先進諸国の人々がわが身のこととして感じているでしょうか?
「沙漠化」とは、1992年ブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(UNCED)で採択されたアジェンダ21によれば、「乾燥、半乾燥、乾性半湿潤地域において気候変動、人間活動等、様々な要因に起因して起こる土地の劣化」です。しかし様々な要因といっても、人間活動による圧力がその中で最も大きな要因であることは間違いありません。加速度的な人口の増加はとどまることを知らず、1960年に30億人であったのが現在は倍のおよそ60億人、このまま増え続け早ければ21世紀初頭に100億人を超えると予想されています。地域的に見れば、生まれてくる子供の10人中9人は発展途上国で、特にアフリカが多く、1990年現在アフリカの人口増加速度は、1時間あたり73,000人と言われています。これは、1分間あたり約1,200人が生まれている計算になります。
沙漠周辺の乾燥・半乾燥地は自然が脆弱で許容量が低いため、人口爆発によって休耕期の短縮や無理な輪作など自然の回復速度以上の過剰な耕作、薪炭材需要増による森林の伐採、過度の放牧が行われると土地は荒廃し、土壌流出、雨量減少、塩類集積、やがては沙漠化へと進みます。沙漠化は農業基盤の崩壊であり、農産物の生産量の激減は慢性的飢餓へと直結します。沙漠化の進行をこのまま放置しておけば、地球上に住む生物の生存環境は悪化の一途をたどり、地球生態系は崩壊してしまうでしょう。
この、傷ついた地球環境の修復と人口増加に見合う食糧増産とを両立させるにはどうしたらいいでしょうか? 森林を切り開いて切り株や石など邪魔者を除去し、大型機械の投入、大規模灌漑、化学肥料の多量投与、高密度の管理、すなわち莫大な補助エネルギーを投入して単一作物を大面積で生産するという、これまでの“近代的”乾燥地農業で実現可能でしょうか?
この経済効率を追求した農業は、自然を制圧・無視する農業、乾燥地の生態系の枠外で生産活動を行う農業と言えます。あるいは、“農業の工業化”とも言えます。このような方法では、人為的補助を中断すると生産量は皆無になるばかりではなく、土地の不毛化を招くことになります。世界で、1900〜1985年の間、人口増3倍(70%強は1950以降)に対し、実質GNPは21倍になりましたが、エネルギーの消費量は15倍(80%強は1950以降)にも膨れ上がってしまいました。また、1950〜1985年の間、穀物生産1tあたりの年間エネルギー消費量は2.6倍(WWI)、化学肥料の年間消費量は1人あたり換算で5.2倍(FAO他)にも増加しました。こうした高エネルギー投入方式で乾燥地域や半乾燥地域で食糧の増産を図ろうとしても永続きするはずはありません。
今後は、沙漠の生態系を大きく変えることなく生産を上げる手法、たとえ低い生産量でも確実に永続できる方法、自然の潜在力を活用する手法に切り替えていく必要があるでしょう。「森林と農業との共存」はその鍵となるのではないでしょうか?
沙漠化地域、乾燥・半乾燥地の緑化を行って森林を造成し、永続的に農業生産のできる環境をつくり維持することが必要です。同時に、将来現地の人々が主体となって継続できる方法であることも大切です。
東京農業大学で行っている沙漠緑化プロジェクトは、まさに乾燥地における「森林と農業との共存」技術の確立と普及を目指しています。本プロジェクトの沙漠緑化、乾燥地農業の手法の特徴は、機械化・高エネルギー投入型などの集約的手法、つまり息切れしやすい方法でなく、「持続性」に主眼をおき、現地の技術レベルでしかもローコストでできる自然の法則を尊重した一見“ローテク”な手法を前面に打ち出したことです(自然のシステムがいちばんハイテクであることは誰しも納得するでしょうが)。
現在ようやく基礎的な技術に見通しがつき、現地での理解を得ることもできるようになりました。今後は、現地の人にも総合的に理解しやすく、確実に根付かせる効果的な方法として、またこれまでのわれわれの成果を自ら評価するため、「新生ワジ農業」集落のモデルづくりに取り組もうと考えています。この、言わば“応用編”が軌道に乗り近隣諸国にまで波及するには、さらなる努力、期間が必要なのは言うまでもありません。また、そのためには、現地とわが国双方の若手研究者・技術者の養成、次世代を担う子供達への教育、啓発活動などが極めて重要です。
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