ロウバイ
ロウバイ(臘梅、蝋梅)

ロウバイが満開期を迎えています。このところロウバイという花の名前を聞くことが多くなりましたが、 ロウバイの花が一般的に知られるようになったのは、それほど古いことではなく私自身この花との出会いも、 20年とは経っていないと思います。

ロウバイ科の落葉低木で、モクレンなどに近い樹木です。この花もわが国の原産ではなく中国から17世紀ごろに 渡来したとの記録があります。花が少ない厳寒の頃から梅に似た黄色い花をつけるので茶人には特に愛されたようで、 各地のお寺や名所となっている日本庭園には必ず数本植えられていますので、この季節に話題になります。

和名の臘梅(ろうばい)は、臘月(ろうげつ)、つまり陰暦の12月に咲く梅のような花という意味だという説と、 梅に似た花がまるで蝋細工のように見えみえるからだという説がありますが、私は判りやすいという意味では後者の方が 説得力があるようです。

この花についての大きい思い出は、私が校長職についた17年も前に遡ります。その年の二学期の終業式の日 『校長先生、この花は何ですか。』と言って、私の部屋に来てくれた5年生の男の子がいました。 手にしている花を見ると何とロウバイなのです。

冬至では、よほど植物の好きな人には人気があったのでしょうが、一般的には知られていない花でした。 私は『えっ、珍しい花だね。ロウバイと言うのだけど、どこで見つけたの。』と聞くと、 校庭で咲いているということです。

私の校長として最初に赴任した大森第一小学校は、昔は海苔の養殖で栄えた古い町ですが、 現在では国道一号線と産業通りと言われる大きな街道に面しているので、自然環境という意味では劣悪で最も 恵まれない学校の一つです。

当時、突然校舎の前面改築という話が持ち上がり、校内の植物を見るゆとりを失っていたことと、まさか校内に ロウバイなどあるとは思わなかったので、男の手にあるロウバイには正直驚いた記憶が鮮明に残っています。

早速さがしてみたところ、まだ枯れた葉が落ちない枝に数個の蕾を見つけました。私の知るロウバイの咲き方は、 すっかり葉を落とした枝に梅と同じように花が咲くのですが、そのロウバイは、まだ葉が落ちないうちに花を持って しまっていたのです。ですから誰も気付かなかったようです。ロウバイの花をみるたびに、思い出す素敵な思い出です。