寒風に立ち向かうように、燐として花をつける梅。 春を待ち望む私たちにとって、何より安堵させる雰囲気を持っています
春の足音を運ぶ使者『梅の花』

つい先日、お正月のお祝いをしたと思ったら、もう2月になってしまいました。昔から『行く一月、逃げる二月、去る三月』と言われるように、年初の三カ月は1年中で最も速く月日が流れる感じがします。

気ぜわしい季節なのですが、日一日と日射しが長くなり、間もなく春が訪れるという実感で気持ちの昂りは、豊かな自然に恵まれた日本人の持つ感性なのかもしれません。
特にこの季節に春近と思わせるのが、各地から伝えられる『梅だより』ではないでしょうか。寒風にも負けず、燐とした清々しさを感じさせる梅の花は、まさに春を待ち望んでいる私たちに、確実に春の足音を感じさせてくれます。

私は木に咲く花が大好きです。

自然に生きる植物には、季節によって様々な姿を見せてくれます。冷気の中で少しずつ花になる芽や葉になる芽が大きくなり、それを見守る私達に春の予感を感じさせてくれるこの季節は、植物が特に生き生きとしているように感じてなりません。

最低気温が10℃を越す時季に一斉に咲き始める咲き様と、その散り際が見事で、春の温かい宵を演出する『桜』は、特に我々日本人に馴染みが深いものです。

その桜の華々しさも良いのですが、冷気の中で毅然として花を咲かせる梅の花の力強さを愛する人々も多いようです。葉が一枚もない梢から、一輪また一輪と花を開けてくれる姿に感動を覚える私も、梅の大ファンの一人です。

我が国でのウメは、奈良時代、中国から伝わったというのが定説で、各地に広がったようです。娯楽の少なかった時代では、自然界の変化が何よりの御馳走であったので、このウメもおおいに好まれ、江戸時代には数百種の栽培種が作り出されていたようです。  随分前のことになりますが、担任をしていた時代、子どもたちが卒業の記念にと、白梅と紅梅の小さな鉢植えの梅をプレゼントしてくれました。

花が終わったので、当時まだ多少ゆとりのあった我が家の庭に移したものが、それぞれ大きくなり、このところ毎年この時季の庭を飾ってくれるようになっています。

この文を書きながらふと庭に目を移すと、満開期を迎えた梅が微笑んでいます。今年の正月に届いた『女の子の母になりました』という年賀状。子どもたちの顔と梅の花をダブらせる教師としての至福の一時です。(杉)