ドクダミ(十薬・重薬)の花が満開です

『ドクダミ』の白い花が満開期を迎えています。この花は都会や地方を分け隔てなく日本中どこにでも見つけることができますので、誰もが一度は見たことがあるはずです。でも、あまりにもありふれているのでかえって、見たことがないと答える人もいるかもしれません。

葉っぱに悪臭があるため疎んじられる代表的な植物ですが、梅雨の季節が近づく頃、勢いよく伸びた茎の先に、はっと驚かされるほど真っ白な四弁の花を咲かせています。

都会暮らしの方はあまり経験ないと思いますが、薄暗い山間の道を散歩している途中でこの花の群落に出会うと、一瞬幽玄の世界に引き込まれたような感じになってしまうほど魅力的な雰囲気を持っています。

真っ白な四弁の花びらのように見えるものは、正しくは花びらではなく、包と呼ばれるもので、尾瀬で有名な『ミズバショウ』と同じものです。実際の花は、この四枚の総包葉の真ん中から立ち上がる花輪にまわりにびっしりつく黄色の小さな部分をさしますが、ごく小さな花のため、四弁の包葉との対があたかも一片の花のように見えるのです。そんなことを知って改めて見ると、さらに魅力を感じるはずです。

ドクダミは『毒痛み、あるいは毒溜め』の意味だとも言われていますが、一般には古くから十薬とか重薬(どちらも読み方は−じゅうやく−)と呼ばれ、民間療法の薬草として広く知られています。十薬というのは、『医者いらず』などと呼ぶ地方もありますので、たくさんの効能があるという意味に違いありません。そしてまた、重薬とはいろいろな薬の役目をこのドクダミが受け持つ、いわば『薬の重役』といった意味だと私は勝手に解釈しています。

薬草辞典で調べたかぎりでも、おできの吸い出しや、ニギビや湿疹などの皮膚病には、この葉の生汁を塗布するのが効果的であるようです。最近は、動脈硬化、高血圧などという成人病には、この草を乾燥させて煎じて服用するとよいと評判になり『ドクダミ茶』など人気が高まっているようです。

私も夏場になると、ドクダミ茶を冷たく冷やして愛飲していますが、あの悪臭は乾燥し煎じることによって全くなくなってしまうから不思議です。

じめじめとした環境を好み、地下茎でどんどん増えますので、はじめに述べたように、公園や道端はもとより、家のまわりにはきっと見つけられるはずです。この植物だけは、人前で摘みとっても喜ばれることはあっても、決して非難されることはありませんので、一度根から抜き取ってよく洗い、お日様で乾かして煎じて飲んでみる価値はありますよ。

花の咲く前の若い芽を摘み取って『天ぷら』にしてもなかなか美味で、地方の宿には若葉を料理に出すところがあるといいます。独特の臭いのある『臭木(くさぎ)』という樹木がありますが、その若葉も『てんぷら』にすると実に柔らかく、自然派の人には春の香りとして人気の一品です。どうやら悪臭のする葉の若芽は美味しいようですね。

これも来年覚えていたら、若芽を採集して、てんぷらにしてぜひ一度味わってほしいものです。(杉)