『お−い だいこん。元気かい。』

 私の自宅の猫の額のような畑では、9月初めに播いたダイコンが、秋の優しい太陽の光を受けて元気に育っています。
 目黒の駅ビルの一畳農園でも、種まきは少し遅れてしまいましたが、勢い良く育っているという連絡を受けています。
 お百姓さんの種の播き方を見ていると、およそ一尺(30cm)間隔で5・6粒ずつかためて播いて、本葉が出てしばらく育った頃、元気な苗を残して間引きをしていますが、私は畝を作らないで土を平らにし、浅く溝を作ってかなりの密度で筋播きする方法をとっています。
 ダイコンを作り始めたころは、私もお百姓さんに教わった方法で栽培したことがあるのですが、素人のにわか百姓のことですので、ついつい5・6粒かためて植えた種から芽生えた小さな命を全て枯らしてしまうことがよくありました。
 ダイコンはハクサイと違って、苗を作って移植する野菜ではありませんので、枯らしてしまうとその部分がぽっかりと空いてしまいます。枯れさせてしまってその部分が空いてしまうと何となく間が抜けてしまい、自分の無能をダイコンに笑われているように思えてしまいます。
 種を密に播くと、当然種がたくさん必要になります。しかも芽が出始めると詰まりすぎて成長が悪くなるのですが、間引きしたダイコンの葉をそのまま生ハムでくるんで、マヨネ−ズを少しつけて食べることを覚えてからは、種子はたくさん必要になるのですが私流の方法をとっています。
 この方法だと、たとえ本葉が出てきてもある程度の大きさになるまで間引く必要がありません。その上、間引きが可能になったら毎日のように新しい葉をつまんで食べることができるという利点があります。
 もう一つ私のダイコン作りの秘策は、毎日ダイコンを見回って
『お−い だいこん 元気かい』
と声をかけるのが日課にしていることです。不思議なことにダイコンは私の声を聞くと元気になるらしく、私のダイコン作りは毎年失敗することはありません。
 現在では葉は真っ直ぐ天に向かって背筋を伸ばすように、元気に育っています。根元も少し太くなりダイコンらしくなってきました。その姿は、私に
『早く食べてください』
と言っているように思え、いとおしくなってきます。
  一畳農園のダイコンたちも、きっと

『お−い だいこん 元気かい』

という声かけを待っていると思います。
ぜひ、見回って上げてほしいものです。(杉)

※一番下の写真は「たたみ一畳農園」で元気に育つ大根です。