『マンサクの花って知っていますか?』

 寒に入り植物たちの多くは、春になるのをただひたすら待っています。1月下旬、寒の終わりごろになると咲き出すのがマンサクの花です。漢字では『金縷梅』と書くのですがこれはなかなかマンサクとは読めません。
 マンサク科の落葉小高木で、太い木になると幹の直径30センチ、高さ10メ−トルにもなるとの記述がありますが、それぼど太い幹になるには人の命より長い年数がかかるようで、私はまだお目にかかったことがありません。
 マンサクは春一番に咲く『まず咲く』から名付けられたという説と、花の形が、豊年を祝う祭りを彩るのぼりのようであるから、豊年漫作の『まんさく』に由来があるとの説がありますが、どちらの説もなかなか風情があります。
 この花との出会いは、もう30年も前、大田区の雪谷小学校に赴任した年に遡ります。当時、雪谷小はそれはそれは樹木の多い学校であり、四季折々の花が咲いていました。これは当時の理科担当のF先生の努力が大きかったと思います。 詳しいことは差し支えがあり省略しますが、この年、私には何一つ仕事がありませんでしたので手持ちぶさたな毎日でした。退屈しのぎにF先生にくっついて歩き樹木の名前を覚えることにしました。
 私の育った町はかなりの田舎だったので、多くの動植物には接していたのですが、木の種類などには全く関心がなく過ごしたため、どの樹木をみても初めて見るものばかりという有り様でした。それでもF先生のおかげで、かなりの種類の樹木や草花の名前を覚えることができました。
 不思議なもので、樹木の名前を覚えるにつれて育て方や世話の仕方などにも興味が湧き、その方面にも手をのばし勉強し始めました。
 今思うと、この年に仕事を全く与えられなかったことが、それまで苦手だった植物の分野に、積極的に係わろうとさせてくれたのですから、私に仕事を与えなかった当時の関係者の方々に感謝しなければならと思っています。
 横道にそれてしまいましたが、私は、夏場にはまったく目立たないこの樹木が冬になると、寒風の中をポケットに手をつっこんで前かがみみになって登校する児童や教職員を励ますように凛々しく咲く姿に、感動をおぼえたことを昨日にように鮮明に思い出します。
 それ以来、この季節になるとこの花を見つけるのが楽しみにしています。 (杉)