『立春期の雑木林で見つけられるウグイスカグラの花』

 去年から続く暖冬傾向は今年になってさらに顕著になっているようです。例年ならば大寒に入ると『ひょっとして雪になるかも・・・』と思わせる日があるものですが、今年はまったくありませんでした。
  そして今日ははや立春を迎えました。昨日は各地の神社や仏閣では『豆まき』が行われたようですが、毎年『豆まき』の映像が流れると、何となく春の訪れが近いぞと思わせる気分になる私は、根っからの日本人かも知れません。
  このところ運動を兼ねて、自宅近くの森を散策するのが日課になっています。横浜市とはいえ私の住んでいる緑区という地域には、まだ深い森が残っています。県立四季の森公園はかなり整備されているのですが、それ以外の場所では数時間歩いても誰一人出会うことがないのも稀ではありません。
  散策の途中には、いくつもの素晴らしい雑木林があります。晩秋から初冬にかけて吹き続けた北風によって、全ての葉っぱは枝から落とされ視界をさえぎるものが何もありませんので、全体が明るくすっきりとした感じが気に入っています。
  贅肉を完全に落とし、理想的な肉体美を誇ると表現してよいのではないでしょうか。コナラやクヌギミズキやホウノキなどの大木が圧倒的な雄々しさで迫ってきます。それぞれの樹木が持つ、むきだしの自然な樹型が美しく魅力的です。
  林の床にうず高く積もった枯れ葉は厚く、一歩一歩くるぶしまでうずまるほどの柔らかさで、私を歓迎してくれます。カサカサという立春期の雑木林独特の音が心地好く気分を柔らかくしてくれます。
 この季節に雑木林で咲いている花などあるわけない、と思いがちです。が、よくよく注意して歩いていると薄いピンクの小さな花を発見できることもあります。ハコネウツギを小型にしたようなウグイスカグラという花です。よくぞまあこんなところに咲いているものといじらしく感じてしまいます。
  私の大好きな樹であるクロモジもいつでも芽を出せるぞというように、その美しい姿を見せてくれています。ミズキの大きな芽もたくましく膨らみはじめています。まだ固い蕾ながらネコヤナギの優しい仕種、エゴノキのかすかな萌黄色・・・などなど、樹木たちは確実に春の気配を感じとっているようです。
 落ち葉をそっと取り除くと、そこにはスミレの若芽が息づいているのを発見します。雑木林の日当たりの良い片隅ではオオイヌノフグリの群落が柔らかい光を浴びて瑠璃色に輝いています。
  まだまだ風は冷たく、春は名のみぞ・・・の早春譜の世界ですが、雑木林には確実に春の気配がただよいはじめています。(杉)