アポセカリズ・ローズ Apothecary's Rose
ロサ・ガリカ・オフィキナリス Rosa gallica officinalis


原産と名前・歴史

モダーン・ローズがこの世に現れる以前の古いバラの一つで丈は低く叢生のシュラブ状態となります。

南部ヨーロッパ、小アジア、コーカサス原産です。

このバラは古くから薬用のバラとして知られるバラです。英名のアポセカリー(薬屋のことで以前英国では薬屋で医療も行いました)はそのために付いた名前です。

別名はDouble French Roseといいますが、それはこの花が八重咲きで、フレンチはRosa gallicaというフランスで栽培された品種があり、それがフレンチ・ローズと呼ばれたため、フレンチ・ローズの八重の種類という意味です。

他にレッド・ローズ・オブ・ランカスターともいいますがこれは、イギリスでの有名なバラ戦争(1455〜1485年)の時にヨーク家は白バラ、ランカスター家は赤バラの徽章だったからで、赤バラはこのバラ、白バラはホワイト・ローズオブヨークと名付けられたロサ・アルバというバラにその名前がつけられています。

ランカスター家のヘンリー・チューダーはボズワーズ平原でリチャード三世を倒してヘンリー七世となりヨーク家のエリザベスと結婚し、チュダー王朝の徽章は赤と白ミックスのバラとなりました。このミックスのバラはヨーク&ランカスターと名付けられています。

現代医学にも影響を与えたローマの医者ディスコリデスの著した『マテリア・メディカ』(『薬物誌』)には600のハーブが記述されていますが、そこにはバラ香油の調整法や首飾りのかわりに婦人の首にかけて用いると不快な汗の匂いを消すバラの匂い玉の作り方や発酵前にブドウ液に入れ3ヶ月後に漉して作るバラ酒の作り方等が詳しく説明されています。又解説の頁で当時バラ油をバラ色に着色する方法はムラサキ科のアルカンナの根から採った赤い色素との説明は興味深いです。

バラとは
バラはRosa (ロサ属)つまりバラ属でバラ科の植物です。和名ではバラ、薔薇と書きます。英名ではローズといいギリシア語やラテン語からの言葉で、ケルト語の“赤い”をあらわす言葉からの由来といわれます。

 ロサ・ガリカ・オフィキナリス

バラの原種は、北半球の寒帯、亜寒帯、温帯、亜熱帯の各場所におよそ200種類があり、そのうち日本には14種あります。

バラは木本の植物で、半常緑または落葉する茂みになるものと、ツルになって伸びていくものとの2種類があります。

現在世界に2万品種ほどあるといわれ、その元を辿っていくと約8種類の原種のワイルド・ローズ(野生バラ)にたどりつきます。

現在のバラの祖先
ロサ・ガリカ
ロサ・ダマスケナ
ロサ・アルバ
ロサ・ケンティフォーリア
ロサ・フェティダ
ロサ・キネンシス
ロサ・ムルティフローラ(日本産ノイバラ)
ロサ・ウクライアーナ(日本産テリハノイバラ)

改良のために役立ったもの
ロサ・ギガンテア
ロサ・モスカータ
ロサ・オドラータ
ロサ・バンクシア
ロサ・ルゴサ
ノアゼット
ブルボン

バラは種類により様々な色と香りの花を咲かせます。葉の色や葉の感触もいろいろあり、花の色や香り、時には実を楽しむためにも、栽培されます。

アポセカリズ・ローズとその交配種いろいろ
丈は低く叢生のシュラブ状態になり、庭で育てられたもっとも古いと思われているバラのひとつ。芳香が強く花径5〜8cmほどの赤いバラ。交配種に深紅色や紫や藤色があり小さな庭にはぴったりのバラです。

*ロサ・ガリカ・オフィキナリス(アポセカリズ・ローズ)
 古代から薬として使われている。強い芳香がある。春のみに咲く一季咲きのバラです。

*ロサ・ガリカ・ヴェルシコロール(ローザ・ムンディー)
 赤と白との絞りの花で、美しく目立つためによく庭に植えられます。16世紀以前のバラです。

 きれいに咲いた我が家のローザ・ムンディー

*カージナル・ド・リシュリュー
  深い紫色の花、葉は濃い緑色。

 カージナル・ド・リシュリュー

*シャルル・ド・ミル
  美しい深紅色のバラ。外側から紫色っぽくなってくる。

バラの育て方
バラは広々として日当たりの良い場所が大好きです。土は保湿性があり肥沃でしかも排水性も良いことが条件です。またバラは以前植えた場所に植えない方が良いといわれ、その場合は大きな穴を掘って土も新しいものにして下さい。

根は養分や水分を吸い上げる真っ直ぐなゴボウ根と細いひげ根です。

普通は接ぎ木した苗が売られますので、台木から出てくる芽は根元からかきとること。

花枝をステムともいい、根元から出てくる新梢のことをシュートまたはベイサルシュートともいいます。シュートは大切に育てます。サッカーは枝の部分から出る太い枝のことですが同様に大切に。

水やりも大切です。葉の表皮部分には気孔という部分があり呼吸作用や蒸散作用、同化作用をするための通路となっていますので水やりの時泥などで汚れぬように注意します。

バラは肥料と時に応じての消毒が欠かせませんが、アポセカリズ・ローズは比較的病気にも強く花もたくさん咲きます。

楽しみ方
一季咲きの花でその上けっこう雨が降る時に咲くことも多いので、咲き時を逃さず花を楽しんで下さい。

フレッシュな花に顔を近ずけてその素晴らしい香りを胸いっぱいに吸い込んで下さい。花弁を摘んで白い部分をちぎりそのままサラダに散らしたり、砂糖とともに煮てからレモン汁をたらしてジャムに。酢に入れてローズ・ヴィネガー、オリーヴ油に入れてローズ・オイル、蜂蜜に入れてバラの香りの蜜を作ることもできます。

乾燥した花弁はハーブ・ティーとして飲むことが出来ます。バラの花びらを入れたお風呂も関節炎やリウマチをやわらげるといわれます。ローズ・ウォーターはシャーベットやゼリームース、デザートなどの香りづけに使われる他、外用により肌のしわやにきび、捻挫、打撲症などのトラブルを直してくれるといわれます。

このバラの薬効は体全体を元気に丈夫にすること。もっともっと生活に生かしたいものですね。今苗を買えば今年の5月には必ず花が咲きますので育ててみて下さい。



参考文献

■『楽しいバラ作り12か月』 桐原春子著 1998年 誠文堂新光社
■『メッセゲ氏の薬草療法』 モーリス・メッセゲ著 1980年 自然の友社
■『ディオスコリデスの薬物誌』 編集責任 大槻真一郎 1983年 エンタプライズ社
■『ばら花図鑑』 鈴木省三著 1996年 小学館


写真・文

桐原春子(ハーブ研究家)

桐原春子オリジナルホームページ
http://www.geocities.jp/haru87herb/

桐原春子さんのビデオはPLANT A TREE〜SHOPPINGでお買い求めいただくことができます。

1.セージ 2.ラヴェンダー 3.ミント 4.センティッド・ゼラニウム
5.ローズマリー 6.アカンサス 7.ハウスリーク 8.コモン・タイム
9.アポセカリズ・ローズ 10.ボリジ 11.ライム 12.ジャパニーズ
ハニーサックル
13.コーンフラワー 14.レモングラス 15.ホップ 16.マートル
17.カルダモン 18.ナスタチウム 19.キャロブ 20.スイート・バジル
21.セイクリッド・ボー・ツリー 22.デージー 23.アロエ・ヴェラ 24.チャーヴィル
25.カレー・リーフ 26.イランイラン 27.アガヴェ 28.サントリナ