「富士山」逸話あれこれ

14. 影富士に取り憑かれた人々                                               

 

 富士山の見方には3つの楽しみ方があるという。

 まずは赤富士。燃えるような赤い富士に魅せられた人は多い。そして逆さ富士。これはさほど富士山になじみのない人でも知っているだろう。富士山麓の湖に映った富士山のことだ。波がなく、湖面が穏やかでないと見られないので、鏡に映ったような美しい逆さ富士が見られるのは、年に数回ほどだと言われている。

 そして最後が影富士である。この影富士は赤富士、逆さ富士以上に見るのが難しい。というのも、赤富士や逆さ富士は登らなくても見ることができるが、影富士は山頂近くまで登らないと見ることができないからだ。一体どんな富士のことなのだろうか。

 影富士とは、富士山の頂上付近から見下ろす雲海に、富士山の影が映る姿のこと。真上から太陽が当たったのでは、富士山の影が形よく映らない。影富士の現れるのは日の出からの数時間、または日の入り前の数時間である。その限られた時間に、眼下に雲海が低く垂れ込めていなければならない。大きな影富士になると、房総半島あたりまで伸びることもあるという。

 影富士を見るのに適した白い雲が立ち込めている時は、登山をするには厳しい条件であるとも言える。それでも影富士のために、山頂を目指してくる人も多いのだから、影富士の魅力、恐るべしである。

(株式会社彩図社「富士山」99の謎より)

 

 

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