「富士山」逸話あれこれ

18. 富士五湖には流入する川も流出する川もない不思議

 

 富士山の山梨県側山麓に、東から山中湖・河口湖・西湖・精進湖・本栖湖と並んでいる富士五湖。地図を見ても、どこからも水の流入する川がないのに、いつも水をたたえている不思議な湖である。唯一の例外として、山中湖から桂川が流出するが、山中湖へ流れ込む川はないのだから、五湖の水源はいったいどこなのだろうか。

 そのなぞを解くには、富士五湖の成立から知る必要がありそうだ。

 富士山の爆発によってせきとめられ、窪地に伏流水でできた湖が五湖の正体である。古代はセノウミ、ウツ湖と呼ばれる湖だったが、ウツ湖はその後の溶岩流で山中、忍野(おしの)、河口の3つに分類され、忍野湖だけが干上がった。

 一方のセノウミは、まず本栖湖が溶岩で分断され、平安時代に青木ヶ原をつくった爆発の溶岩によってさらに西湖と精進湖に分けられたのである。富士山やその側火山が爆発した、それだけの溶岩を流出させたということでもある。

 もとは皆、富士山の伏流水によって水をたたえていた。伏流水とは、地上に降った雨や雪が地下にしみ込んで、地層の中の目の粗い岩や砂礫から流れ出てくるもののことだ

 爆発による溶岩で形成される地層にある五湖は、これらの伏流水がしみ出してできた、いわば大きな水たまり。分断されて五つになっても、穴だらけの溶岩を通る伏流水は、変わらず湖にしみ出す通り道があるということだろう。

 この五湖のうち、本栖湖、精進湖、西湖は、かって一つの湖だったということの証が、三つの湖面の標高が同じという点だ。しかも、三つの湖の水の増減はかならず一致していて、水位がいつも同じなのだ。つまり、セノウミだった時代の地層の部分で、この三つは今もつながっていると考えていい。伏流の不思議である。

 「富士の高嶺に降る雪は、解けて流れて五湖の水」というわけだ

  (河出書房新社「日本地図の楽しい読み方」より

 

 

 

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