| 23. 「富士山」をなぜ「フジサン」と呼ぶのか |
日本のシンボル、富士山は標高3776メートルを誇る本邦一の高い山だ。2番目に高い南アルプスの北岳を584メートルも引き離している。
富士山は高いだけでなく、たいへん美しい姿をしており、古来、多くの歌に詠まれ、絵に描かれてきた。『万葉集』に収録されている山部赤人(やまのべのあかひと) の「田子の浦ゆうち出でて見ればま白にぞ不尽の高嶺に雪は降りける」はよく知られている。
富士山はなぜ富士山というのか。実は、それがよく分かっていない。富士山は古くは不尽山、不自山、不二山、布士山、福慈岳などとも書かれていた。「富士」と書くようになったのは、平安時代以降のことだ。平安時代の中期、漢詩人の都良香(みやこのよしか)が『富士山記』というのを書いている。富士山にまつわる伝承を記したものである。
「富士山」という山名の由来には、火を意味するアイヌ語のフンチから来ているという説に始まって、すばらしいという意味のマレー語のプシから来ているという説まで、たくさんの説がある。山部赤人の歌では、富士山は「不尽」と表わされている。それは一説に煙が尽きないことを意味しているという。富士山は二つとしてない。すなわち不二である。それが富士山の語源であるという説もある。
また一説に、「奇し(くし)」から来ているという。『古事記』の天孫降臨のところで、「くじふるたけ」(神秘な峰という意味)という山が登場する。その「くじ」は「奇し」で、不思議なことを意味する。富士山は「奇し山」で、それがフジサンに変化し、「富士」の字を当てるようになったというのである。
『竹取物語』では、兵士(つわもの)どもが大勢、登ったことから、「多くの士」、つまり「富士山」と呼ばれるようになったとされている。これはもちろん富士山の名をもとにしたフィクションだが、富士山のフジの語源はもとより、なぜ「富士」と書くようになったかも明らかではない。「常陸(ひたち)国風土記」では、富士山は「福慈岳」と表わされている。
(毎日新聞社刊「日本人として知っておきたい地名の話」より)
逸話2「富士山という名前の由来は?」を参照のこと。
