「富士山」逸話あれこれ

35. ことわざ辞典で“富士”を引いてみると。

 

富士の砂(すな)、麓(ふもと)に落(お)つればその夜(よ)の中(うち)に頂(いただき)に還(かえ)る     
 俗信。「俗諺に富士の砂麓に落れば、其夜の中に頂にかへるといえり、似たる事あり、『事文類集』に、陜西鳴砂山、砂州南、其砂或隋人足而墜、経宿復還於山上とあり」〔隋・嬉遊笑覧-七〕

 

富士の山(やま)と丈比(たけくら)べ     
 とても及ばないことをたとえていう。富士山と丈比べ。「富士の峰と長(た)け並(くら)べ、猫の額の物を鼠の伺う喩へにや」〔源平盛衰記-二〇〕

 

富士の山(やま)程(ほど)     
 非常に多いことをたとえていう。「ちは文や富士の山ほど書ぬらん 恋に心はうきしまがはら<一滴>」〔俳・鷹筑波-三〕

 

富士の山(やま)ほど願(ねご)うて蟻塚(ありづか)ほど叶(かな)う     
 「富士の山ほど願うて擂り鉢ほど叶う」と同意。

 

富士の山(やま)ほど願(ねご)うて擂(す)り鉢(ばち)ほど叶(かな)う     
 望みや願いのなかなか達せられないことをいう。棒ほど願うて針ほど叶う。「富士の山ほど願て蟻封ほどかなふ。富士ほど願てすりばちほどかなう」〔俚言集覧〕

 

富士の山(やま)ほど願(ねご)うて桃(もも)の実(み)ほど叶(かな)う     
 「富士の山ほど願うて擂り鉢ほど叶う」と同意。「諸芸を習始る時は天下一に成べしと思て取付ても、漸々人並にも成かぬる者也。世語に、富士山ほど願て桃の実ほど叶とは云ならはせり」〔隋・一話一言-一五〕


 

富士の山(やま)を蟻(あり)がせせる     
 ((「せせる」は、あちこちつつきまわす意))小さなものが大きなことを企てるたとえ。また、力の差の大きいことをいう。大黒柱を蟻がせせる。「富士の山を蟻がせせる <伝家宝>螞蟻児搬倒泰山」〔俚言集覧〕

 

富士の山(やま)を張(は)り抜(ぬ)く     
 富士山を型にして張り子をつくる。不可能なことをたとえていう。〔俚言集覧〕

 

富士は磯(いそ)     
その物事に比べると、高い富士山も磯同様に低い。比較にならぬほどすぐれているさまをほめていう。いそ。
「富士は磯。富士山位の山はいふに足らずの義」〔俳・世話尽-曳言之話〕

(小学館刊「故事・俗信ことわざ大辞典」より)

 

 

 

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