■近江(おうみ)富士(三上山・432m) 滋賀県野洲市
東海道新幹線に乗って、米原から京都に向かう途中、野洲付近で左手の車窓に見える可愛らしい富士山型の山が三上山です。
三上山は、一見して成層火山ではないかと思わせるような形をしていますが、実は火山体ではなく、おもに古生代の堆積岩が、花崗岩質のマグマと接触・変成して生じたホルンフェルスと呼ばれる固い岩石から成っています。硬い岩質であるため、侵食に抵抗して残り、富士山型の独立峰になったのです。
「近江富士」または「おうみ淡海富士」の名は、古くからさまざまな文献にあらわれていて、東海道を行き来する旅人にとっても、よく目立つ道しるべだったと思われます。歌川廣重の『東海道下り日記』にも「一名淡海富士と言ふ」と記されています。
むかし三上山をぐるぐると7巻き半もしていた大ムカデを、俵藤太が退治したという伝説が名高く、「ムカデ山」の別名もあります。
※写真提供:八田正文