「もう二度と、この番組をきかないで」
〜私たちのきくことのできない特別な音楽番組「カントリーボーイ」〜

「カントリーボーイ」DJ 佐竹 えり子
取材:PTPL仙台支局長 立岡 学

DJロージーこと佐竹えり子さん

3月3日にはご自宅に訪問、3月20日には収録現場に行き、ディスクジョッキー(以下、DJ)ロージーこと佐竹えり子さんとはいったい何者なのか?そして、何をされている方なのかを取材させていただきました。

Q、DJ、ロージーさんは何者???
DJロージーさんこと佐竹えり子さんは、東北の中心都市、仙台市の南隣に位置する名取市の割烹「いろはや」の若女将を務めながら、保護司、そして「カントリーボーイ」と言うリクエスト番組を届けているパーソナリティ。
「割烹とDJ?」と思う方がいるかもわかりませんが、ロージーさんは割烹を営む佐竹家に嫁ぐまで、東京と仙台をまたにかける人気DJ&パーソナリティ、ロージーとして活躍されていました。


さて「カントリーボーイ」という番組ですが、実はわたしたちには聴くことができない特別な番組で、
「なぜ特別なのか?」といえば、毎月1回、最終日曜日の夜の1時間、仙台市にある東北少年院、同じく青葉女子学園、青森県の青森少年院(青森は2カ月に1回)において、犯した過ちを反省し、立ち直っていくために日々更生している子供たちからのリクエストやメッセージを紹介し、少年達にエールを送る番組だからです。
収録中メッセージを読むDJロージー
消灯前の1時間(平成18年4月から自由時間の夕方に変更)、過ちを犯した子供たちには、その日一日の反省、また出院(少年院をでること)したあとのことを考えたり、読書や勉強など自由に過ごせる時間があり、その時間に「カントリーボーイ」が館内に流されます。そして、皆はロージーさんの声に耳をかたむけ、久しぶりに大好きなアーティストの曲を聞きながら、ロージーさんからのメッセージをこころで聴き、両親へのすまないという思いや傷つけてしまった方々への心からの反省を感じながら、すすり泣く子供もいれば、二度と過ちは犯さないと誓いをたてる子供など、様々な思いを胸に聴いているのだそうです。 そしてロージーはさんは最後にこう言います。「二度とこの番組を聴かないで・・・・これが約束だよ。」と。

Q、なぜ、「カントリーボーイ」が生まれたのか???

「カントリーボーイ」を始められるきっかけになったのは、2001年12月、DJロージーさんは保護司の任命を受け、東北少年院と青葉女子学園の見学に行ったことでした。
その際、院内の長いコンクリートの渡り廊下で1人の少年と出会ったロージーさん。
その少年は、見学している更生保護女性会の方々の列の最後尾にいた佐竹さんにむかって、「こんにちは」と挨拶。その少年の真っ直ぐで透き通った目を見た佐竹さんは、「なぜこの子がここにいるの・・・えっ!何かしなければ、私が彼らに何かできることはないだろうか・・・」と、唖然としたのと同時にこころを駆り立てられる衝動があったそうです。

その日の夜、地域コミュニティ局に番組をもっていたDJロージーさんはちょうど収録日でした。そして収録中、自分が流した曲になぜか涙があふれてきたそうです。
そしてロージーさんは大きな気づきをえます。



内容の打ち合わせをするDJロージー
「音楽が大好きな子供たちに、聴きたい音楽をとどけ、こころに響くメッセージをプラスしてあげれば、みんなへの最高のプレゼントになる。そして本当のプレゼントは、お金では買えない心なんだよ!ということをも伝えることができる!!!」と。

その思いが少年院の院長先生をはじめ職員の皆さんに理解を得ることができ、わずか2週間後の12月24日のクリスマスにクリスマスプレゼントとしての第1回「カントリーボーイ」がながれ、すでに6年が経過しています。

windows media player

「もうこの放送をきかないで」とメッセージを送るDJロージー。
既に放送されたカントリーボーイの一部です。お聞きください。(4分45秒)



Q、なぜ、「カントリーボーイ」と名付けたの??? 
そして、どんな思いでメッセージを伝えているの???
準備をするミキサー渡辺さん

「カントリーボーイ」というと田舎者と訳されますが、田舎=故郷(ふるさと)なわけでして、懐かしく、温かく、陽だまりみたいな、そこにいるだけでホッと安心できる心の故郷を感じる番組でありたいとロージーさんは言っています。

どんなにつらいことや、悲しいことがあったとしても、「カントリーボーイ」はいつだって君を応援している故郷だからね。世の中にはこう言う大人もいるんだから!とにかく希望をもってがんばってね!」と。
子ども達は、非難や中傷はもう嫌というほど聞かされており、大人への不信感をもっている子どもたちがほとんどだそうです。でもそれは間違っている、君たちを理解し、応援している大人だっていると言うことを伝えたい。世の中も捨てたものではないと言うことを知ってほしい。
そしてロージーさんは言います。「凍りついた心にだって差し伸べる優しい言葉の人掬いで氷が溶け出すことだってあるでしょう。100人のリスナーがいるとしたら、その中のたった1人でもいい。私たちの想いがその人の心に伝わってくれればと願いながら番組を送り続けるの・・・」と。


聴いている子供たちの反応は、リクエストカードを読むとそこに書かれています。
「あんなにマイナーな音楽をかけてくださってありがとうございます。探すの大変だったと思います。とにかくがんばります」とか、「もうすぐ出院になるのでラジオが聴けなくなってロージーさんの声が聞けなくてとても残念です。」というようなメッセージ(感想)を僕も収録したときに読ませていただきました。

Q、少年院と少年犯罪については???
東北少年院も青葉女子学園も、それから青森少年院もそうですが、矯正保護施設であり、訓練校。当然広いのだが殺風景。子供たちはいろいろな訓練をする分、資格を取得できるメリットはあるといいます。

ただ更生を目指す子供たちには、院内にいるときは先生や教官などがフォローしてくれるのですが、出院し、社会に出てしまうと家族はいるけれども、やはりフォローしてくれる様な社会環境は少ない。ゆえに、トラブルがあるとまた(少年院に)戻ってしまうそうです。その少年院再入院数は16.7%。
二度三度と少年院に戻ってきては、また出て行くという子たちが約5人に1人ぐらいいるというのが現実ですが、それでも少しづつは減ってきているといいます。

そして出院を願いつつも、社会に出たときには自分たちの様な存在に対しての社会の目に不安を感じている子供たちが多いといいます。しかし一歩、一歩進んでいく以外に道はなく、また少年院は刑務所と違って、刑期は終わっても本当に出院できるわけではありません。親御さんなど引き取り手がいないと、実は院から出られないのが少年院なのです。

Q、ロージーさんの思い。そして子供たちの償いと望みは・・・そして夢

最初にもふれましたが、ロージーさんは「もう二度と聞かないでね。」と伝えています。
小さな力だけれど、それだけが伝わればいいと思っているといいます。
そして、とにかく再犯をせず、自分だけではなく被害者の方のために、反省し、自分の心に悔いて、それをバネに立ち上がること、そして更生していくことこそ、本当の償いだとロージーさんはいいます。
収録中にちょっとした1枚!
ワンファミリー仙台の新沼さん(一番左)
、立岡も出演中(左から2番目)
ロージーさんのただ一つの願いは、とにかく罪を償い、更生し、幸せになり、いい笑顔を持った人になって欲しいと言うこと。
そして、ロージーさんの夢は、出院期間が過ぎても引き取り手がなく、出院できない子供たちを引き取り、所有の山で自給自足の生活をし、少年達が巣立つ場所、心の故郷を共に作って行くことだそうです。すべてを受け入れ、母なる愛を実践し、子供たちの更生に尽力されているロージーさん!

まさにHAND IN HANDの実践者であると思った立岡でした。
  トップにもどる