--- 言葉の芽 Vol.44 「頑強の芽」

 頑強な体と言えば、ちょっとやそっとでは倒れない体格風体を思い描くことだろう。

 「頑」の下に丈夫の「丈」をつけると頑丈となるが、頑丈な体と言ったなら、みなさんはどんな体を思い描くのでしょう?

  以前、小学校6年生にこの質問をぶつけた。頑強な体と言えばみんなはどんなイメージかなぁ?と聞いたら「ハァ〜!?」とか「がんきょうってなに?」という反応になり、ほな、頑丈な体と言えばみんなは・・・・・・と聞いてる途中で男の子と女の子の多くが、後ろの方を指さした。そのターゲットの子は男の子だったのだが、高校生かと思う容姿だった。そこで僕が
 「君、わるいけど、ちょっと立ってもらえる?」
 と言って立ってもらったら、背丈は、180cmはあるように見え、体重は90kgはあるなって感じの子で、肌は浅黒く、いかにも頑丈そうな体の持ち主だった。
 でも、その表情や姿勢から、決して頑強な体といえる雰囲気はなく、やっぱり頑丈な体という方がぴったりの男の子だった。

 では、どんなタイプが、頑強な体と言わさしめるのかというと、僕が思うのは、手強そうな表情で、手強そうな腕、手強そうな胸板、手強そうな出で立ちをしているタイプ。
つまり、先ほどの男の子は、立ち上がるときのほほ笑み方や、立ち方がどことなく優しい感じがして、やっぱり、頑強ではなく、頑丈そうなのだ。
 そしてこのとき、立ち上がってくれた子に僕が思わず、
 「君、ほんまに6年生かぁ?おっさんやん(笑)。ウソウソ。君、そんな体してたら、敵なしやろう?ケンカ強そうやん」といった。そしたら、「オレより、トシの方が強い」っていった。「トシって誰?どの子ぉ?ちょっと立ってよぉ」と僕がいったら、その子より3,4列前にいた子が「ハイッ」とガラガラ声でいいながら立ち上がった。さっきの子より、二回りは体が小さいが、その立ち方の勇ましいこと。胸の張り方、照れたそぶりなど一切見せない表情、いかにも、こっちこそ頑強な体の子だった。
 「君かぁ。君、ケンカ強いの?何かやってんの?」と僕がきくと、
 「うん。剣道とサッカーならってる」とガラガラ声でいうもんだから、
 「そうか、二つも習ってんのかぁ。そりゃ二つも習ってたら声もガラガラになるわなぁ」と、僕がいったら、トシくんもみんな一斉に笑った。
 トシくんとその前の180cmの子とは大の仲良しとのことだったが、トシくんは、剣道を通じて精神修養とサッカーを通じてチームワークの大切の両面が、体中に出ていた。そして、どちらも大声を出すため、声はガラガラになってしまったが、自信に満ちあふれていた。
 180cmの子は、後で話してわかったことだが動くことはキライで、カップラーメンが大好きとのことで、頑丈な体は授かったが、心は頑丈そうではなかった。子どものときから良く動く子は、知らず知らずのうちに体も心も強くなっているのだろう。
 今、日本中のあちこちで、早寝、早起き、朝ごはんという運動がさかんに行われているが、僕が思うに昔から言われる、良く動き、良く食べ、良く寝て、それに声が大きい子は、ウソがつけないといわれる。「大声を出して」を良く動きの前に足せば威力絶大だと思う。

 そして何より、これが子どもたちの体も心も頑強にする芽となると僕は心の底から信じている。




ブックドクター・あきひろ