家には、‘まる’という名前の柴犬がいます。今年の5月で2才になります。この前、まると散歩をしていたら、遊歩道にジンチョウゲのつぼみをみつけました。「この中にはね、春の香りがいっぱいよ」とまるに話しかけたとたん、つぼみをぱくっ、ごくっ。だれよりも早く、春の香りを味わったまるでした。

 今、夫も私も息子たちも家に帰るとまず、まるをぎゅっと抱きしめて「ただいまー」。ふわふわの毛とあったかいペロペロが、一日の疲れをすいとってくれるんです。つまり、まるは我が家のストレススポンジ ちょっと、かわいそうかしら。

 まるがくる前、家にはナックという柴犬がいました。18才でなくなったのですが、そのときの悲しさといったら…。9年間、犬をかう気持ちになれませんでした。ところがある日、仕事のあいまにぶらっとインターネットで柴犬のブリーダーさんのホームページをのぞいてみたら!茶色の毛糸玉のような小犬の写真。かわいいー。うっとり〜。毎日のようにそのホームページをのぞくようになって、そのうち家族全員で見るようになって、とうとう「かおうか」「うん!」。

 さっそく明石(兵庫県)のブリーダーさんに連絡して、男の子を予約。しばらくして小犬が生まれたという連絡がはいりました。ちょうど絵本(ちなみにその絵本は「あちゃらさんとこちゃらさん」)の打ちあわせが京都であったので、帰りに小犬に会いにいくことにしました。

 いたいた。生まれて2週間ぐらいの小犬が4匹。小屋の中でお母さんにくっついています。ブリーダーさんいわく、「子育てが上手なママなのよ」。なるほど、おだやかな感じ。パパは数々の賞をとっているそうで、見るからにたくましい。ピンとたった耳、くるりんと美しく巻いたしっぽ。なんといっても、桃太郎のお伴で鬼退治にいった犬の子孫ですから(?)、立派です。

 ブリーダーさんのおすすめは、兄弟のなかで一番大きくて、顔がむちゃぶくれの1匹。まだ目もあいていません。手のひらにのせると太めのもぐらみたい。「早くうちにおいで。まってるよ」と聞こえない耳に話しかけ、ママには「だいじょうぶ。まかせてね」と声をかけてさよならをしました。

 まるは、7月の半ばトラックにのせられて明石から世田谷までやってきました。みんなでうきうきと、朝早く営業所に迎えにいきました。まるはバスケットに入って到着。ママのにおいのついたタオルもいっしょです。ブリーダーさんのやさしさが感じられて、一同ジーン。ころころと太ったまるを、抱いたときのずっしり感。これは、命の重み。大切に育てなくてはと思いました。

 こうして、インターネットでまると出会い、花まるの毎日がはじまったのです…が…。なんと、家にきてすぐに、大事件発生!
ああ、犬をかうのってこんなに大変だったっけ?の日々が始まりました。今、まるは何事もなかったかのように、部屋のひだまりでスゥスゥ気持ちよさそうにねむっています。まさに‘飼い主の心、飼い犬知らず’。