ひなたぼっこばなし 第20話 「 大きなともだち 」

草木のはっぱが、やわらかくて光っているようにみえます。とくに、やなぎの小さな小さな葉が、細い枝にたくさんくっつきながら、風にゆれているようすがすきです。

このまえ、しば犬まるちゃんと息子と、世田谷美術館にいきました。美術館の敷地(しきち)に、とても大きなクヌギの木がどーんとはえています。ベンチにすわって、なぜか「トンガリコーン」をたべながら、そのクヌギをみるのが、私たちのきまりごとになっています。いつからか忘れたけど。

しかし・・大きい。いったい何年ここにたっているのでしょう。区役所にきいてみましたが、わ
からないそうです。若緑色のはっぱが、さわさわとゆれています。秋には、どっさり葉をおとしますが、全部おとしおわるころには、すでに冬になっています。実をさがすのですが、そうじをしたあととか、人につぶされたあととかで、みつけるのが大変。今年は、がんばってさがしてみます。

きっと、美術館が建つ前、ここはクヌギのような落葉樹の森だったのでしょう。カブトムシもいっぱいきたでしょう。コンクリートの下には、前とかわらない土があるのに、もう虫たちが顔をだすこともないんですね。困ったもんだ。・・・なんて、クヌギにブツブツいってもしかたない。いや、ひょっとしたら、クヌギが私にブツブツいわせているのかも。

1本の木、とくにずっと長く生きてきた木とむかいあうと、一人言が多くなります。ふしぎな安心感と気持ちよさを感じます。これから、葉がもっと茂ってきて、大きな腕をひろげるように、木陰をつくってくれます。
私たちの大きなともだち、クヌギの木の何回目かの春が、はじまっています。


大きいでしょう。しば犬まるがみえるかな。
太い枝。小さなはっぱがみえるかな。