ひなたぼっこばなし 第30話 「 はとぽぽのいのち 」

はとぽぽ
つかまえてすぐのはとぽぽ。小さなダンボウルの家にいれました。
ちゅうしゃ
2本で2100円。先生は片手ですっすと注射をすませました。
はちみつ
はちみつをうすめて、スポイトでのませました。
おはか
ゼラニウムははとぽぽが米を食べていた花台においてある花です。

おはか

おどおどして、おちつきがないハトです。頭の毛がたっているのでモヒカンくんと名前をつけました。

 2月のひなたぼっこばなしで書いたはとぽぽが、死にました。少し長くなりますけど読んでください。

 はとぽぽは、自分のえさ場を守るために若いキジバトがきたとき、すごい勢いでおいはらっていました。土曜日の朝も、みごとに追いはらったあと、花台においてあるプランターのかげで、こぼれたえさを食べていました。その日の夜、まさかいないだろうと思ってみてみたら、はとぽぽは同じところでじっとしていました。死んでるのかとおもって、どきっとしたのですが、息はしています。でも、見るからに元気がありません。これは病院につれていかなくては。おもいきってつかまえることにしました。私が両手で体をつかんだとき、はとぽぽは「クウッ」と鳴きました。よかった。まだ鳴く元気がある。少し安心しました。

 小さいボウル箱の中に新聞紙を細かく切ってしきつめ、家をつくりました。中にえさをまいて、しずかなところにおきました。
 次の朝、動物病院に電話をし、野鳥をみてもらえるかをききました。病院によっては、野鳥の病気がペットの鳥にうつるといけないので、みてくれないところもあるからです。さいわい、近くの病院でみてくれるというので、つれていきました。

 先生は、はとぽぽをさわり、「ものすごくやせていますね。ほかのハトにずいぶんいじめられていたのでしょうね。やっと、見つけたえさ場を自分の安心できるところだと判断して、そこで眠ることにしたのだと思います」と話したあと、栄養剤を2本注射してくれました。
そして、「家ではちみつ水をのませて、1時間ぐらいしたら箱にいれたまま、外に出してください。野鳥は、人にかわれるのはしあわせではないですから」と。えっ、この弱りきったハトを外にだす?そっちのほうが、しあわせ?う〜ん。

 家にもどり、先生にいわれたとおり、はちみつ水を飲ませました。はとぽぽは、よく飲みました。そして1時間後、息子は大きなダンボウルで立派なまどつきの家を作ってもってきました。そして、私たちは無言で、はとぽぽを新しい家にいれました。

 次の朝、はとぽぽは冷たくなっていました・・・はとぽぽをティッシュでつつみ、米といっしょに土にうめました。満開のチンチョウゲと赤いゼラニウムをかざりました。「ちいさなとりよ」という絵本があります。森にあそびにいった子どもたちが死んだ鳥をみつけ、おはかをつくってあげます。小さなとりのために歌をうたう子どもたちの場面がふっとうかびました。はとぽぽを家においたことがよかったのかどうか、わかりません。でも、はとぽぽは、最後にうちをえらんできてくれたのです。

 そして今、はとぽぽがたたかった若いキジバトが毎朝えさを食べにきます。このハトの頭は、ピンっと毛がたっています。きっといじめられたのでしょう。うちの花台の手すりは、いじめられバトたちのかけこみ台になっているのかもしれません。ま、いいか。
はとぽとはとぽぽが、天国で元気にとんでいますように。心からそう思います。

 ちいさなとりよ【岩波の子どもの本】
 マーガレット・ワイズ・ブラウン 文/与田 凖一 訳/レミー・シャーリップ 絵