ひなたぼっこばなし 第41話 「 ちいさな春、てんてんてん 」

ミツバチ
ジンチョウゲがさいたよー。
ミツバチの巣箱
ひなずしの大行進!
 
 3月になると、まだ朝や夜はさむいのに、なんとなく春がきたような気分になります。花屋さんの店先は、菜の花や桃の花やチューリップで、にぎやかです。愛犬まるちゃんと散歩する遊歩道(ゆうほどう)にも、ツワブキやオオイヌノフグリやいろんな草がすがたをあらわしはじめました。桜のつぼみもふくらんできたような気がします。うちの庭のジンチョウゲもたった一つだけ花が開きました。小さな花なのに、すごくいいにおい。がんばってるなあ。  

 子どものころ、母がひな祭りにおすしでおひなさまをつくってくれました。ちらしずしを三角おにぎりにして、薄焼き卵の着物を着せます。お顔はうずらの卵。髪はのり。目は黒ごま。口は紅しょうが。姉や弟と「どこから食べる?」といいあいながら、ちょびちょび食べたのを思いだします。
 今年のひなずしは、お姫様とお殿様が6組。つまり12人がずらりとならんで、まるでひなずしの団体旅行みたい。卵色の着物が菜の花みたいで、春がきたーっていう感じがしました。

 アリやチョウチョも、そろそろすがたをあらわすころですね。私がまだ小学校にあがらないころ、春になるとほこほこになった土で泥団子を作ったり、穴からでてきたアリをつかまえたりしました。ときどきアリをつぶして、へんなにおいをかいだり、水たまりに落としたりもしました。なんて、残酷(ざんこく)なんでしょう!
 ついでに言ってしまおう。小学生のとき、もっとひどいことをしました。モンシロチョウの羽根がすごくきれいだったので胴体に細いハリガネをまいて、指輪(ゆびわ)にしたのです。それはそれはウキウキしながら。でもね、指にはめてみたとたん、私はすごくみじめな気持ちになりました。こんなことしちゃだめだって、つよく思いました。
 子どもは残酷だっていうけれど、私ほどチョウチョにひどいことをした子どもはいないと思います。このことがあってから、私は虫にやさしくなったような気がします。セミやテントウムシに糸をつけてとばしたりはしたけれど……ごめんなさい。

 花屋さんや散歩道や庭に顔を出しはじめた花や草、鳥の鳴き声、木の芽のふくらみ、アリやチョウチョ。一つひとつが小さな春の点。この点がたくさんふえていって、線になり面になって、いつのまにか春がいっぱいになっていくのですね。
 みなさんも、まわりをみまわして、耳をすまして、土や木のはだをさわって、春の点をみつけてくださいね。