ひなたぼっこばなし 第56話 「夜の公園さんぽ」




すごーく、みんな、ハツラツしてる。


なんの楽器でしょうか。
駒沢公園全体にひびきわたっていました。


ドッグランもおおにぎわい。
でも、まるはドッグランは苦手なので通過。


ジョギングする人たち、えらいなあ


もうすぐ0時だというのに…


歌声に、耳をすますまるちゃん

 ミンミンゼミ、アブラゼミ、ヒグラシ、ツクツクホウシ。外を歩いていると、セミの声のにぎやかなこと。駅前の花屋さんの店先には、おひさま色のホオヅキとさわやか色の朝顔が並び、お向かいの和菓子屋さんの店内には「ふまんじゅう」と書かれた札がぺたりとはられています。暑いけれど、毎年くりかえされる私の町の夏景色です。

 さて我が家では、近ごろ、夜の11時ごろに、柴犬まるのさんぽにいきます。ねるまえに1度行っておかないと、夜中に「おしっこ〜」ときゃんきゃん鳴くからです。家でしてくれると助かるのですが、トイレのしつけがうまくいかず、外でしかしないようになってしまいました。夜のさんぽは、平日は家のまわりですが、土曜、日曜は、ちょっと遠出をします。まるを車にのせて、駒沢公園か蘆花(ろか)公園に行きます。蘆花公園は、木がうっそうとしていて、暗く、ちょっと、こわい感じ。駒沢公園は、人も多く、それぞれ勝手なことをしていて、なかなか、面白いです。

 例えば、ジョギングしている人たち。犬をつれて走っていたり、電話をしながら走っていたり。夜の11時だというのに、しっかり身支度して、ぞろぞろぞろぞろ。健康をかんがえている人たちが、こんなにいるなんて。また、バスケットボールやスケボーを楽しんでいる若い人たちや芝居の練習をしている集団がいたり、ギターをひきながら、声をひっくり返して、大声でうたっている若者がいたり、ヨガをしている人たちがいたり、天体望遠鏡で空をみている家族連れがいたり。ベンチで寝ころんでいるおじさんがいるかと思えば、サックスの練習をしている人もいたり。びっくりしたのは、駐車場のベンチでコンビニ弁当を食べていた6人家族。4人の子どもたちは、まだ小さくて、一番上の子が小学3年生ぐらい。いったい、なにがあったのかしらといろいろ想像をめぐらすのも、楽しみの一つです。懐中電灯をもって林の中でなにかをさがしているお父さんと女の子を発見。自転車のかぎでも落としたのかと思ったら、どうやら、羽化するセミをさがしているみたい。夏の自由研究かな。見つかったかしら。

 いったい、ここは、どこ?今、何時?夜のうっすらとした暗やみに包まれて、それぞれが好き勝手にすごしているふしぎな時間。そんな人たちの中を、まるはしっぽをふりふり、鼻を草むらにつっこみながら、うれしそうにすすんでいきます。私たちも、まるのあとを、人間ウオッチングを楽しみながら歩きます。まるがいなかったら、夜の11時に駒沢公園をさんぽするなんてことはぜったいになかっただろうな。

 犬がいてもいなくても、夏は、夕涼みがてら、家族そろって家のまわりを散歩してみるのも楽しいですよ。いつもとちがう夜の町の表情を、発見するかも。