ひなたぼっこばなし 第75話 「お盆のような月が」

豆電球ではありません。懐中電灯の光でもありません。お月さまです。

土から1メートルぐらいのところに、セミの抜け殻がこんなに!なにか井戸端会議でもして、とびたったのかな。

  毎日、毎日、なんて暑いのでしょう。日中、外で遊ぶ子どもたちの声が聞こえません。いったい、みんなどこにいるのかしら。
 お盆に、お墓参りに行ってきました。熱中症になるといけないので、朝7時30分に出発しました。お墓までなんと、30分で到着。いつもは1時間ぐらいかかるのに。気温もまだ30度になっていないようで、ほっ。

 お墓の雑草をぬいて、お花をそなえ、お線香をたいて、手をあわせていると、背中合わせのお墓から、「暑いですね。お墓参りも大変ですよねー」とおじいさんに声をかけられました。びっくり。墓石の向こうから、いきなりのあいさつは、やめてほしいんですけど。

 今年は「旧暦のお盆7月15日」が「新暦の8月14日」で、「旧盆」と「月おくれのお盆」が重なる珍しい年だそうです。14日はきれいな満月でした。そうなんですね、そもそもお盆は満月の日だったんです!( ともいき暦の8月13、14、15、16日をクリックして下さい。 ) 月あかりにみちびかれて、ご先祖さんが迷うことなく家に戻ることができるように。14日の夜、家のまわりを歩いて街灯がないところで月をとりました。雲がかかってぼやっとしてましたけど、明るさは十分。盆踊りも月の明かりの下でおどったのでしょうね。ご先祖さんたちに「私たちこんなに元気ですよ」とお見せするために。満月の明かりはなんでも、すみずみまではっきり見えてしまう明るさより落ち着きます。

 15日の夜、まるちゃんと雑木林の公園にお散歩にいきました。セミしぐれがものすごくて、なぜかカラスもたくさんいて。ひょっとしたら、殻からでてくるセミを食べようと待っているのかも。月あかりでよく見える夜だから?…なんて想像してしまいました。夏の終わりのセミ、ツクツクホウシの鳴き声も聞こえて、夜の風に少し涼しさを感じて、ピッと思い出した一句を。

 秋き来ぬと 目にはさやかに見えねども
        風の音にぞ 驚かれぬる
 
藤原敏行

夜空にはお盆のようなまんまるな月。今も昔もかわらない同じ月。