屋久島の植物分布


  「屋久島だより」の第一回 ”屋久島ってどんなところ?”
で、世界遺産に指定された理由の一つとして、「世界的に特異な樹齢(じゅれい)数千年のヤクスギをはじめ、多様な植物がある」と説明しました。
今回は屋久島の多様な植物の分布についてふれてみたいと思います。


  まずは屋久島の地形をおさらいしましょう。島の直径は南北約24q、東西約28qとほぼ円形です。この小さな島に九州で一番高い山、宮之浦岳(みやのうらだけ)など、1,000mを越す山々が連なっています。一番低い所と高い所の標高の差が2,000mもありますので場所によって気温も大きく違います。たとえば、標高1,000mのヤクスギランド(屋久杉の森を散策できる場所です)の年間平均気温は約14度で東京と同じぐらいですが、標高1,936mの最も高い宮之浦岳(みやのうらだけ)では6〜7度と北海道と同じくらいまで下がります。これによって屋久島では沖縄、九州だけではなく北海道で見られる植物も生育しているのです。

  それでは、どんな植物が分布しているのでしょうか、下の図(A)を見てください。横軸は島の西にある永田岬から島の反対側の落川までを示し、縦軸はその場所の標高を表しています。これを見ると、島周辺の標高が低い海岸部分ではハイビスカスやガジュマルなど亜熱帯(あねったい)植物が見られ、中央部に向かい標高が上がるにつれて、暖帯性、温帯と続き、最高部ではヤクシマダケなどの亜高山帯(あこうざんたい)植物が生育していることが分かります。標高が高く気温が低い亜高山帯は森林が生育できる限界の場所です。
(A)屋久島の植物垂直分布

 次の図(B)は屋久島全体で植物がどのように分布しているかを表したものです。島の中心に向かって標高が高くなっているので、生育する植物も変動していることがよく分かります。
(B)屋久島の植物水平分布


それでは山の様子をみてましょう。

島の北西に位置する国割岳(標高1,323m)です。標高によって変わっていく植物分布の様子がよく分かります。
この展望場所は絶好の観光スポットになっています。
 

世界自然遺産に指定されている地域を走る西部林道です。
亜熱帯植物のガジュマルやアコウが見られます。屋久島はガジュマルが自生する最北端の地です。

西部林道にある瀬切川から西海岸を望んだ景色です。海岸近くから山がそびえたっているため、海の青さと山の緑のコントラストは絶景です。

九州で一番高い宮之浦岳(標高1,936m)と永田岳(標高1,886m)です。森林が生育できる限界のところに厳しい自然環境に耐えて背が低いヤクスギなどの針葉樹と広葉樹が見られ、それより高いところにはヤクシマダケやヤクシマシャクナゲなどが生育しています。


 希少種(数が少なく珍しい種類)や固有種(特定の地域にしかない種類)だけではなく、沖縄から北海道までの植物が生育する屋久島。植物を巡る日本縦断(じゅうだん)の旅が、この南の島だけで味わえる自然がつまった場所です。